エーデルワイス通への道

一団員からのメッセージ


 道楽者の調べ


 かつて、楽器を吹くことを(というかこの楽団で活動することを)「道楽だ!」と言い切った団員がいる。確かに、自分自身の音楽に対する姿勢は、「趣味」と言うよりは「道楽」といったほうが正確だと、そのとき私は素直に感じてしまった。

 「趣味」と「道楽」には決定的な違いを感じる。それは自分の人生にそれがしめる重みの違いである。私は楽器を吹くのがなによりも好きだ。音楽を聴きだすと、それは「耳で聴く」を越えて五感を駆使して「全身で感じる」に近い状態となる。私が楽器に向かうのはただただ演奏することが好きだから。音楽で表現したいことがあるからであって、仕事でたまった憂さを晴らすために吹くのでは決してない。私の場合、仕事は日曜におもいっきり楽器を吹いて楽しみたいからやっているようなものだ。仕事も大事だけどそれ以上に楽器が大事。だが、仕事に手抜きが出来るほど世の中は甘くない。日曜日に楽器を思いきり吹くためには仕事もそれ以上に一生懸命やる必要があるというのが私の考えだ。そのご褒美として自分に楽器を存分に楽しむ時間を与える。このようにして作った大切な時間だから、楽器を吹くことに対しても自分の気力、体力の全てを注ぐのである。これが、私が楽器を吹くことを「道楽」と感じる所以である。極端なことを言えば、その「道楽」を取ってしまったら私が私らしくいきるという人生は成り立たないのである。

 そんな道楽者が集まるところ、それが「Edelweiss Brass Orchestra」。ここは平日を精いっぱい生きた人間が、週1回の最高の楽しみを満喫する場所。仕事も年齢も違う人間達が、それぞれの1週間分の思いを楽器を通して主張しあう場所である。Edelweissという場所に利害関係はない。だから、みんなしたい表現をしたいように主張することができる。そう、誰にも気兼ねせずに。 表現しなかったらもったいない。せっかくの場所だ、どんどんここに来て思う存分自己主張してほしい。そして、その自己主張の固まりがうむひとつのものを一緒に作ってほしい。道楽者が作る「音楽」という宝物を…

 私たちは道楽として音楽をやっている。皆それぞれ仕事や学業、研究といった本分を持っている。この本分を持っている以上、自分の生活の全てを音楽に捧げ、技術を究極まで追い求めるプロのような姿勢を持つことはできない。だが、週1回だけ楽器を持つアマチュアにはアマチュアにしか出来ない表現があると私は信じている。 週7日間のうち1日だけ、たった1日だけだからこそ、私たちがそのとき楽器に込める思いは大きい。いわば密度が7倍になるようなものだ。その密度が生む爆発的な表現こそがアマチュアだからこそできる表現である。気がはいらなければへったくそな演奏だが、気持ちが集中するととんでもなく感動的な演奏ができる。全員が精いっぱいやったときの演奏が聴衆の心に与えるものは、やはり感動と呼んでもいいのではないだろうか。危ない綱渡りだが、演奏者にとってはこんないい演奏が出来たときの喜びは大きい。どうしても練習ではあわなかった部分が、本番のステージでのみぴったりあったときのあの鳥肌の立つ感覚。果たして拍手はもらえるのだろうか?アンコールはかかるのだろうか?とドキドキしながらのったステージで、やまない拍手をもらったときのあの感動。 Edelweissの団員は、みんなこの宝物を作る道楽者であり続けてほしい。どんなに仕事が忙しくても、いつも週1回の楽しみを一生懸命楽しむために集まってきてほしい。仕事も勉強もどこかにおいて、この短い時間に自分の全てを音楽に捧げることでのみできる、すばらしい宝物をみんなで作りたい。 そして、聴衆には演奏を耳で聴くだけではなく、その私たちが作るもの、感じるものすべてを一緒に感じとってほしい。私たちの宝物を演奏会を通じて共有してほしい。

 音楽は宝物だ。だが中途半端な気持ちでは絶対に輝かせることができない宝物である。今年もまた、この宝物を私たちは奏で続ける。限られた時間を使って、道楽という精神の元に。

('97.04.21/Yuko Tanaka


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