Production Note

 それはいつものごとく唐突に始まった。コンサートの構成に悩んでいた7月のある日、加瀬氏(Cl.)を長とする企画メンバーに川嵜氏(Tp.)が細かくワープロ打ちした企画書を手渡した。そのボリュームたるや二十数ページ。そこには十数本のSF映画の緻密なデータと解説が書かれていた。あっけに取られるメンバーに「今年はSFをやりましょう。これが僕の企画です」と満面に笑みを浮かべながら語る川嵜氏。すでに彼の頭の中には曲間の構成、ナレーション、照明プランなどのヴィジョンが描かれていた。題して「近未来への警鐘〜そして希望〜」。それから賛否両論、喧喧諤諤の議論が始まった。保守派は「この企画がお客さんに受け入れられるのか。果たしてこんな事が素人で可能なのか」。推進派は「おもしろいんじゃないか。やってみる価値はある」。

 そして夏合宿へと突入した。この時点で、正式にパートリーダー会議にかけられた。もう一度、検討が行われた。そして最終判断は、常任指揮者の守屋氏(Cond.)と芳地代表(B.Cl.)に委ねられた。慎重派の守屋氏から「いいんじゃないの」、芳地氏から「やってみようか」との意見に一気に実現へと動き出した。原則的には川嵜案が採択され、その準備として出版されている楽譜を探すことと、そして市販されていない場合はオリジナルアレンジをすること…。また同時に選曲・構成の検討も始まった。もちろんアレンジは発案者である川嵜氏に任されたのは言うまでもない。

 一方、印刷チームの安藤(Per.)、水谷(Trb.)は、この「近未来への警鐘〜そして希望〜」というタイトルに危惧を抱いていた。「余りに唐突すぎないか」「どっかの宗教と間違われないか」「チラシを配るときに誤解が生じないか」「ではこの企画にどんなフレーズが望ましいのか」など検討に検討を重ね、発案者・川嵜氏との話し合いで一字一句へのこだわりと折衷案で、この「来るべき世界」が決定し、ビジュアルもそれに沿う形で制作にとりかかった。ちなみに「来るべき世界」は、SF作家H・G・ウエルズの小説を原作に1936年に映画化された映画のタイトルでもある。

 アレンジ、印刷物が細々とながらも進む中で、リーダーである加瀬氏を始め企画のメンバーは悩んでいた。「果たしてどう演出をするか…」。コンサートの客層は幅広く、小学生(時には乳幼児も)から年配者までと幅広い。それが原案のままでは、余りにも突き放しはしないか。司会者を立てるか、過去2年のような演出でいくか…。はたまたナレーションを…。しかし生の音楽が死んでは元も子もない。様々な試行錯誤の上、最終決定が下った。

 アレンジを担当した川嵜氏は焦っていた。9月中旬に間に合わせるはずの譜面がなかなか出来上がらない。そして11月の合宿にも…。守屋氏の怒りの表情が浮かぶ。残された楽譜は「ロボコップ」。11月16日、「ロボコップ」が完成した。また印刷チームはインターネット、ファックスなどを駆使し、アイデアをまとめあげ、最終原稿は居酒屋「北の庄」に98ノートとマッキントッシュを持ち込み書き上げ、翌日、印刷所へ。11月20日、ナレーション録音。そして川嵜氏は仕事でロサンゼルスへと飛び立っていった。帰国はコンサートの直前だという。果たして彼はステージに間に合うのだろうか?
 思い起こせば川嵜氏が原案をファックスしてきたのは7月4日、アメリカ独立記念日。そう、「インデペンデンス・デイ」だった。


NARRATION


映画紹介


演奏会の模様


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ジャンルを越えると、新しいサウンドが見えてきた。
Edelweiss Brass Orchestra
Established 1978




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